ADHDで仕事が続かない。原因を「性格」から「条件」に置き換える

公開:2026年8月27日/更新:2026年8月27日働きづらさを整理する

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三社目で同じことが起きたとき、たいていの人は同じ結論に行き着きます。会社が悪かったのではなく、自分に問題があるのだ、と。

ただ、そこで止まってしまうと打つ手がなくなります。性格は簡単には変えられないからです。この記事では、原因を「自分の性質」からいったん外して、どういう条件のときに続かなくなっているのかを見ていきます。

「続かない」は、粘り強さの話ではないかもしれない

同じ人が、ある職場では三か月で消耗しきり、別の職場では二年続くことがあります。本人の性格は変わっていません。変わったのは職場の条件です。

だとすると「続かない自分」ではなく「続かなかった条件」を先に特定したほうが、次の判断ができます。次の職場を選ぶときの基準になりますし、いまの職場で変えられる部分が見つかることもあります。

もちろん、条件をすべて説明できるわけではありません。体調の波のように、条件を整えても残るものはあります。それでも、全部を自分の意志の問題にしてしまうよりは、切り分けたほうが手が増えます

公的な調査が示していること:入口の条件だけで定着率は変わる

障害者職業総合センターが2015年度から2年かけて行った調査(調査研究報告書 No.137、2017年4月発行)では、ハローワークの職業紹介で就職した人の職場定着状況が集計されています。

この報告書が示している知見のひとつが、同じ人が同じように就職しても、入口が「障害者求人」か「一般求人」かで、就職後3か月未満の離職リスクが変わるというものです。報告書は、すべての障害区分において障害者求人による就職のほうが3か月未満の離職リスクが低く、精神障害のある人の場合は3か月から1年の期間についても同様だったと記述しています。

ここで大事なのは数字そのものではなく、続くかどうかを左右する要素に、本人の努力とは別のものが確実に含まれているという点です。求人の種類は、入社したあとの頑張りとは関係のない、入口の条件です。それだけで結果が変わっています。

なお、この報告書は2017年発行のものです。制度も雇用環境もその後変化しているため、最新の状況を示すものではありません。この記事では「本人の要因以外で定着が変わりうる」という一点の根拠として引用しています。

続かなくなる場所は、だいたい5つに分かれる

ここからは具体です。「仕事が合わなかった」で片づけずに、どこで消耗が起きていたかを分けます。当てはまるものだけ読んでください。全部に当てはまる必要はありませんし、当てはまらないものがあっても構いません。

① 仕事そのものではなく、割り込みで消耗している

作業自体は問題なくできる。ただ、電話、話しかけ、チャットの通知で中断が入り、そのたびに元の場所へ戻るのに時間がかかる。夕方には、何も終わっていないのに疲れきっている。

この場合、消耗しているのは業務ではなく切り替えの回数です。同じ業務量でも、割り込みの少ない部署に移っただけで別物になることがあります。逆に、業務内容が好きでも割り込みが多い環境では長続きしにくくなります。

② 指示が曖昧なまま進み、あとで戻される

「いい感じにやっておいて」で始まり、提出したあとで「そうじゃない」と言われる。やり直しになる。これが続くと、着手する前の確認に時間がかかるようになり、さらに遅いと言われる。

問題は理解力ではなく、要件が言語化されないまま渡されていることです。同じ業務でも、仕様が文書で渡される職場と、口頭でふわっと渡される職場では負荷がまったく違います。

③ 覚えることが最初の1か月に集中している

多くの職場では、入社直後にマニュアルのない口頭説明が大量に来ます。ここで取りこぼすと、あとから聞き直しづらくなり、聞けないまま進んで失敗し、評価が下がる、という順番で崩れていきます。

続かなかった原因が入社1か月目の設計にある場合、業務内容を変えても再発します。見るべきは業務ではなく受け入れの手順です。

④ 体調の波と、勤務の固定が噛み合っていない

動ける週と動けない週の差が大きい場合、週5日・固定時間という形そのものが負荷になります。調子のいい時期に働きすぎて、その反動で動けなくなる、という往復が起きることもあります。

これは業務内容の問題ではなく、勤務の形の問題です。同じ仕事でも、裁量労働や在宅の併用で成立することがあります。

⑤ 「言えない」ことが積み上がっている

困っていることを伝えられないまま、自力で処理しようとして限界が来る。伝えたときに「みんなそうだよ」で終わった経験があると、さらに言いにくくなります。

ここで効くのは、我慢の量ではなく伝え方の型と、受け取る側の体制です。配慮を求める文化がない職場では、伝え方を工夫しても通らないことがあります。

辞める前に、変えられるものと変えられないものを分ける

上の5つを、次の3つに仕分けてみてください。紙でもメモアプリでも構いません。

区分
自分の側で変えられる記録の取り方、確認の仕方、伝え方の型
職場に頼めば変わるかもしれない割り込みの窓口、指示の文書化、席の位置、勤務時間
その職場では変わらない会社の文化、業界の商習慣、上司の性質

三つ目に多く入るなら、いまの場所での改善には限界があります。逆に一つ目と二つ目が中心なら、辞める前に試せることが残っています。

この仕分けを飛ばして転職すると、同じ条件の職場を選び直してしまうことがあります。求人票に「アットホームな職場」と書いてあっても、割り込みの量も指示の出し方も書いてありません。何を避けたいのかを言葉にしておかないと、次を選ぶ基準が作れません

いまの職場で試せること

条件の一部は、大きな交渉をしなくても動かせます。

  • 割り込みを1か所にまとめる。「急ぎ以外はチャットにください」と伝えるだけで、切り替えの回数が減ることがあります。
  • 口頭で受けた指示を、その場で短く復唱して残す。「では、この形で、この期限で進めます」と一行送っておく。あとで戻される回数が変わります。
  • **入社直後に説明されたことを、自分用の手順書にしておく。**聞き直しづらさは、記録があると消えます。
  • 困りごとを、症状ではなく業務の言葉に置き換えて伝える。「集中できない」ではなく「電話番と並行だとミスが増えるので、午前は電話を外していただけると助かります」のように、相手が動ける形にします。

この4つ目は、文章にするのに時間がかかります。生成AIを下書きに使うと、自分の困りごとを配慮事項の言葉へ翻訳しやすくなります。具体的な使い方はAIを味方にするにまとめています。

ただし、これらは職場が話を聞く前提のある場合にだけ効きます。伝えたことが評価に跳ね返るような環境では、無理に開示しないほうが安全なこともあります。

それでも変わらないときに、次に見る場所

条件を仕分けた結果、「その職場では変わらない」に主要な項目が集まったなら、外に選択肢を探す段階です。順番としては、次の3つがあります。

  1. 公的な相談窓口で、自分の条件を整理する。 地域障害者職業センターでは、職業評価や職場適応の支援を無料で受けられます。何が向いていて何が負荷になるかを、第三者と一緒に言語化できます。
  2. 働き方そのものを変える道を検討する。 割り込みの少なさや在宅の可否が決定的なら、職種を変えたほうが早いことがあります。AI・ITの仕事がその選択肢になりうるかは、AI・ITを仕事にするで、向く条件と向かない条件の両方から書いています。
  3. 訓練や就労支援の制度を使う。 一定期間、収入を止めてでも準備に充てられる状況なら、制度としての選択肢があります。費用や対象の条件は支援と転職を使うで、公的資料をもとに整理しています。

どれが正しいかは、いまの生活の余裕によって変わります。すぐに収入が必要なら1と2、準備の時間を取れるなら3が現実的になります。

この記事で書かなかったこと

診断や治療については書いていません。当サイトは医療情報を扱わない方針です。体調そのものについては医療機関にご相談ください。

また、「ADHDだから続かない」とも書いていません。同じ診断名でも、困る場面も得意な場面も人によって違います。この記事で扱ったのは、続かなくなりやすい条件が確かに存在するという話であって、診断名から結果を決める話ではありません。

続かなかった職場が複数あるなら、そこに共通していた条件があるはずです。まずはそれを一つ書き出すところからで十分です。

このページの情報源

  1. 障害者職業総合センター(NIVR)調査研究報告書 No.137「障害者の就業状況等に関する調査研究 - 障害者の職場定着の現状とは -」(2017年4月発行)一次資料
    確認日:2026年8月27日
    求人種類別・障害種別の職場定着率を集計した調査。本文で引用した「障害者求人のほうが3か月未満の離職リスクが低い」という知見はこの報告書の記述による。
  2. 厚生労働省「障害福祉サービスの内容」一次資料
    確認日:2026年8月27日
  3. 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)「地域障害者職業センター」一次資料
    確認日:2026年8月27日
    全国の所在地一覧。職業評価・職場適応援助を無料で受けられる公的機関。

数字の扱い方については情報源とこのサイトの作り方に書いています。

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