職場で配慮を求めるのは、わがままなのか?
配慮を求めたいが「わがままだと思われないか」で止まってしまう人へ。法律上どう位置づけられているかを公的資料で確認し、通りやすい伝え方と、通らなかったときに何が起きているのかを整理します。
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「電話対応を減らしてほしい」「口頭だけでなく、チャットにも指示を残してほしい」。そう頼みたいと思っても、わがままだと思われないか、周りに迷惑をかけないかが気になって、言えないことがあります。
合理的配慮とは、障害による仕事上の困りごとを減らす方法を、本人と会社で話し合う仕組みです。希望がそのまま通る制度ではありませんが、困りごと、仕事への影響、考えられる方法に分ければ相談しやすくなります。
「わがままかも」と感じてしまう理由
周りは電話に出ているのに、自分だけ外してほしい。ほかの人は一度で覚えているように見えるのに、自分だけ文書でほしい。頼んだことで仕事を押しつけるのではないか。評価が下がるのではないか。
もう一つ難しいのは、「平等」と「同じ扱い」が混ざることです。全員に同じ方法を使うと、ある人だけ仕事を始められない場合があります。たとえば、口頭でしか指示を出さない職場で、聞き漏らしが続いている人に文書を併用することは、仕事を免除する話ではありません。仕事を進める入口を整える話です。
配慮の方法は、本人の希望だけで決めず、会社の業務や負担も含めて話し合います。
法律ではどう位置づけられているか
厚生労働省は、雇用の分野で事業主に二つのことを求めています。
- 障害を理由とする不当な差別的取扱いをしないこと
- 働くうえで支障となっている事情を改善するため、必要な措置を講じること
募集・採用では本人からの申出により必要な措置を講じること、採用後は均等待遇や能力発揮の支障となる事情を改善するため、施設整備や援助者の配置など必要な措置を講じることが示されています。根拠は障害者雇用促進法です。
合理的配慮は、事業主に提供義務がある仕組みとして位置づけられています。
一方、何が必要かは人と仕事によって変わります。「発達障害なら電話を外す」「ASDなら在宅にする」のように診断名だけで決めるものではありません。同じ困りごとでも、担当業務や人数、使っているシステムによって方法は変わります。
内閣府の案内でも、合理的配慮は一方的に結論を出すのではなく、本人と事業者が対話し、対応案を検討する考え方が示されています。職場では、困りごとを伝え、会社側の事情も聞き、別の方法を含めて調整します。
具体的な紛争や不利益が起きている場合は、労働局などの公的な相談先や専門家へ確認してください。
希望した方法が難しいと言われたら
厚生労働省の案内には、事業主に「過重な負担」を及ぼす場合は合理的配慮の提供義務の例外になることも明記されています。
たとえば、小さな事業所で担当者が一人しかいない仕事を、常に別の人へ代わってもらうことは難しいかもしれません。安全上、どうしてもその場所で行う必要がある仕事もあります。
希望した方法が難しいと言われたら、次を確認します。
- 何が難しいのか
- どの時間・作業なら可能か
- 別の方法はあるか
- 期間を決めて試せないか
「電話をすべて外す」は難しくても、「入力作業をする午前の30分だけ外す」なら可能かもしれません。「毎日在宅」は難しくても、「会議資料を読む日は静かな席を使う」という方法があるかもしれません。
仕事に起きていることを伝える
困りごとを正直に伝えても、相手が何を変えればよいか分からないことがあります。
集中できなくて困っています。
これだけでは、相手は時間を短くするのか、席を変えるのか、仕事を減らすのか決められません。次の三つに分けます。
- どの条件で起きるか
- 仕事に何が起きるか
- 何が変わると進めやすいか
たとえば、こうなります。
伝票入力中に電話対応が入ると、戻った行が分からなくなり、二重入力が起きています。午前の入力時間30分だけ電話を外し、終わってから折り返す形を相談したいです。
別の例です。
口頭の指示に変更が重なると、最初の内容と混ざることがあります。変更点だけチャットにも一行残していただけると、確認してから進められます。
これなら、何を変えると仕事が進むのかを相手が検討できます。
自分の困りごとを分けるときは、ADHDで仕事が続かない記事にある「割り込み」「曖昧な指示」「受け入れの手順」という見方も使えます。診断名ではなく、起きている条件を探すための記事です。
相談前に、四行だけ書く
面談の場で初めて説明しようとすると、緊張して大事な部分が抜けることがあります。事前に四行だけ用意します。
担当している仕事:
困る条件:
仕事に起きること:
相談したい方法:
たとえば、次のようになります。
担当している仕事:午前中の伝票入力
困る条件:入力中に電話が入る
仕事に起きること:戻る行を間違え、二重入力が起きる
相談したい方法:入力する30分だけ電話を外し、終了後に折り返す
起きたことを具体的にし、試せる方法を小さくします。
相談方法は、口頭、メール、面談など職場によって違います。口頭で伝える場合も、終わったあとに「本日相談した内容は次の理解です」と短く残すと、あとで内容が変わるのを防ぎやすくなります。
AIは、申し出の下書きに使える
言いたいことはあるのに、職場へ送れる文章にするところで止まる場合があります。会社が生成AI(入力した指示に応じて文章などを作るAI)の利用を認めていて、機密情報を入力せずに使えるなら、文章の整理だけを任せられます。
次の困りごとを、職場へ相談する短い文面に直してください。
条件:
- 診断名は書かない
- 相手を責めない
- 「起きる条件」「仕事への影響」「相談したい方法」の順にする
- 方法は決定ではなく相談として書く
- 200文字以内
- 書いていない事実は足さない
困りごと:
[固有名詞を伏せて書く]
出てきた文章は、自分の職場で使う言葉へ直します。「ご高配を賜りたく」のように普段使わない表現が入ったら削ります。AIは上司との関係や社内ルールを知りません。
顧客名、個人情報、未公開の数字、社内資料は入力しないでください。より詳しい注意と使い方は、発達障害と仕事とChatGPTの記事で扱っています。
AIを使えない職場なら、次の三行を自分で埋めるだけでも形になります。
○○のときに:
仕事へ△△が起きています:
□□という方法を相談したいです:
何を相談したいかが伝われば十分です。
通らなかったとき、何が起きているのか
配慮を相談しても、すぐに進まないことがあります。「自分の頼み方が悪かった」と一つにまとめず、止まった場所を分けます。
制度を知らない
上司が合理的配慮という言葉や社内の窓口を知らない場合です。人事、障害者職業生活相談員、社内の相談窓口など、別の確認先があるかを探します。
その人に決める権限がない
直属の上司が理解しても、勤務時間や担当変更を一人で決められない場合があります。誰の判断が必要か、次にどこへ相談するかを確認します。
希望した方法の負担が大きい
人員、安全、費用、業務の性質から、最初の方法が難しい場合です。時間や範囲を小さくする、別の方法へ変える、試す期間を決めるなど、代わりを探します。
運用を変える意思がない
理由を説明せず、「みんな同じだから」「前例がないから」で話し合いが終わる場合です。記録を残し、社内の別窓口や外部の相談先を検討します。
制度を知らないなら情報を確認し、権限がないなら決められる人へつなぎます。方法の負担が大きいなら代案を考え、対話そのものが拒まれるなら別の相談先を探します。
相談した日、伝えた内容、返答を短く残しておくと、同じ説明を繰り返す負担が減ります。
話し合いの結果を、期限と一緒に残す
「検討します」と言われたまま時間が過ぎることもあります。次に確認する日を決めます。
本日相談した件は、人事へ確認いただき、来週金曜日までに回答をいただく理解で合っていますか?
試すことになった場合は、方法、期間、見直す日を残します。
方法:午前の入力中は電話を外す
期間:2週間
確認すること:入力ミスと折り返し件数
見直す日:9月15日
試した結果、別の負担が増えたら、方法を調整します。
会社から代案が出たら、元の困りごとが減る方法かを確認します。静かな席へ移る代わりに質問できる人が遠くなり、別の困りごとが増えることもあります。方法の名前ではなく、仕事がどう変わったかを見ます。
開示するかどうかは、自分で決める
合理的配慮を正式に求める場面では、会社が必要な情報や確認書類について説明することがあります。ただし、診断名や障害について誰にどこまで伝えるかは、軽く決める話ではありません。
開示した情報が職場でどう扱われるか、不利益が起きないか不安を感じる人もいます。この記事は、診断名の開示を勧めません。
診断名を出さず、まず業務上の困りごととして相談できる場面もあります。たとえば、指示を文書でもらう、優先順位を確認する、静かな場所で一定時間作業する、といった相談です。
一方、制度として合理的配慮を求める場合に、会社から必要な確認について案内されることもあります。分からないまま個人情報を広く伝えず、目的、共有される範囲、保管方法を確認してください。
開示を迷うときは、会社と利害関係のない公的な相談先や支援者と、利点と不安の両方を整理してから決める方法があります。
手帳を持つことと、職場へどこまで伝えるかは別の判断です。手帳・受給者証・障害者雇用の違いから確認したい場合は、就労移行支援と転職エージェントの違いで、制度と次の行動を分けて整理しています。
配慮だけでは変わらない条件もある
小さな変更で仕事が回りやすくなる場合があります。一方、仕事の中心そのものが負担になっている場合や、対話を続けても運用が変わらない場合は、今の職場だけで解決するのが難しいこともあります。
たとえば、次の状態です。
- 配慮の相談をしたこと自体が評価へ悪く使われる
- 決めた方法が守られない
- 指示や担当が毎日変わり、記録も残らない
- 必要な変更が仕事の中心と両立しない
- 相談を続けることで体力を使い切っている
配慮で調整できる範囲と、環境を変えないと動かない範囲があります。
外へ相談するときは、診断名や会社への評価だけでなく、次の記録が役立ちます。
- 相談した日と相手
- 伝えた困りごと
- 希望した方法
- 会社からの返答
- 試した結果
長い日記にする必要はありません。事実と日付が分かれば、相談先が状況を整理しやすくなります。法律上の個別判断が必要な場合は、都道府県労働局などの案内を確認してください。
次を考えるときは、就労移行支援と障害者向け転職エージェントの違いで、訓練や生活の立て直しから必要なのか、求人探しへ進めるのかを確認できます。
合理的配慮は、仕事を続けるために変えられる条件を話し合う仕組みです。希望が難しいときは、理由、代案、試す期間、次に確認する日を決めます。
このページの情報源
- 厚生労働省『雇用の分野における障害者の差別禁止及び合理的配慮の提供義務』一次資料
確認日:2026年8月28日
事業主の差別禁止、合理的配慮の提供義務、過重な負担の例外を確認 - 内閣府『令和6年4月1日から合理的配慮の提供が義務化されました』一次資料
確認日:2026年8月28日
合理的配慮について対話を重ね、対応案を検討する考え方を確認
数字の扱い方については情報源とこのサイトの作り方に書いています。
